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ダウ・ケミカルと荒川化学工業提携 ~欧州で水添石油樹脂を展開~

1998年11月 9日

 荒川化学工業(本社:大阪市、社長:石部 修平)とダウ・ケミカル社(本社:米国ミシガン州、社長: ウィリアム・スタブロプロス)は、この度ヨーロッパにおいて水添C9石油樹脂(商品名:アルコン)の販売を行うことで合意した。

 これに伴い、ダウ・ケミカルと荒川化学は水添石油樹脂を販売する合弁会社をドイツのフランクフルトに設立する。合弁会社の社名は欧州荒川有限会社(Arakawa Europe GmbH)で、欧州、中東およびアフリカで「アルコン」水添石油樹脂の販売を行い、販売数量15,000トン、年商40億円を目指す。設立は1998年、社長はダウ、副社長は荒川より派遣される。

 この販売提携に伴う市場拡大に対応できる体制を構築するため、ダウ・ケミカルでは、同社が80%の持ち分を有する旧東独のBSLプロジェクトに荒川化学の製造技術を導入して水添石油樹脂の製造施設を建設する。BSLはベーレン石油化学コンビナートのエチレンクラッカーから生産されるフィードストックを利用してこれを生産することにしている。この設備は、1999年央に稼動し、年産15,000トンの規模でスタートする予定。

 荒川化学は、水島石油化学コンビナートにある同社の水島工場を軸として、水添C9石油樹脂市場の拡大を見ながらこれまでにも増産体制を繰り返してきたが、更なる展開を図る上で長期的に競争力のある原料石油樹脂の確保が不可欠で、予ねてより欧州や他地域での現地生産を検討してきた。

 一方、ダウ・ケミカルは旧東欧圏で最大を誇った旧東独のブナ・ソウ・ロイナ・オレフィンフェルブン(BSL)への参加を契機に、ベーレン工場で総合的近代化合理化計画の一環として、ここで生成するフィードストックの有効利用を検討してきた。

 両社は、アルコンという商標名で欧州全域において長年にわたって確立してきた信頼性と粘着剤用途の他、プラスチック機能添加剤としてのアプリケーション面で世界的にトップクラスの評価を受けている荒川化学の技術による水添石油樹脂の技術力・販売力の強みとダウ・ケミカルの総合的な生産能力を活かすことで今回の提携に合意したもの。

 荒川化学は、天然樹脂の代表とも言える松脂(ロジン)誘導体メーカーとして世界最大手の一つであるが、1965年、世界で初めて天然樹脂に代わる水添石油樹脂の開発に成功、古い歴史を持つ天然樹脂である松脂(ロジン)と新しい石油化学からの石油樹脂という天然および石油化学由来の両方の原料から製紙用各種添加剤、印刷インキ・塗料用樹脂、粘着・接着剤用のタッキファイヤー(粘着付与剤)などの各種樹脂誘導体を製造販売しているスペシャリティ・ケミカルのリーダー。

 ダウ・ケミカルは年間売上高200億ドル以上を誇る世界第5位の化学企業であり、現在世界157ヶ国で化学品、プラスチック製品、エネルギー関連製品、農業化学製品、消費者用製品および環境サービスなどを提供しており、世界全体で約4万300人の従業員を有する総合化学会社。

 BSLコンビナートではかつて東欧圏で最大の旧東独のブナ・ロイナ・ベーレンの石油化学コンプレックスで、旧東独下では目立った投資が行われておらず、競争力を失っていたが、ダウ・ケミカルの参加により総合的合理化と近代化が実施され、極めて競争力のあるコンビナートに再建中である。

 ダウ・ケミカルのスペシャリティ化学品ビジネス副社長のキップ・スミス氏は、「ダウと荒川化学工業の協力関係によって、製品開発とアルコン樹脂のマーケッティングにおける荒川化学工業の長所と、ダウ・ケミカルの統合的な生産能力を活かすことができるようになる。粘着・接着剤の需要は伸び続けており、プラスチック製品の機能添加剤としての需要も合わせると、両社がそれぞれの長所を相互補完する機会は豊富にある。また、これによりダウのスペシャリティ化学品の商品ラインも拡大することができる」と述べている。

 ウォーターホワイトレジンいわゆる白物樹脂と呼ばれる無色で高品位の水添石油樹脂はタッキファイヤー(粘着付与剤)としてテープ、紙おむつ用などの各種粘着剤・接着剤用に幅広く利用されているが、この他にプラスチックフィルムの硬さ、ねじり性、バリア性、低温収縮性の向上など各種プラスチック機能の向上剤としての用途の伸びが目立っている。

以 上